初恋フォルティッシモ
俺はスマホを耳にあてたまま、風呂場に向かいながら言った。
「同窓会はとっくの前に終わったよ。で、今帰って来たトコ」
「え、ほんと!?じゃあユリナに会いに来て!今すぐ!」
「…ふざけんなよお前…」
ユリナは俺とは反対に明るすぎるくらいの明るい声でそう言うと、まるで子どもみたいに俺を急かす。
…いきなり電話してきて、何を言うのかと思えばまたいつものワガママだ。
まぁ、わかってたけどね。
ユリナは、顔は可愛いけどワガママすぎるし性格が悪い。
けど、ユリナってやっぱり麻妃先輩に似てるし。
仕方ないけどそこに惹かれたんだよな……。
だってもうきっと、俺は麻妃先輩には逢えないから。
「無理疲れた。また今度時間つくるから許して」
「えぇー!やだやだー!会いたいー寂しいー!」
そしてユリナは、俺が風呂を沸かしている間に電話の向こうでそう言うと、またいつもの駄々をこねだす。
…うるさい。耳がキンキンする。
「ユリナの友達の彼氏はね、すっごい優しいんだって!深夜でも、会いたいって言ったらすぐに来てくれるんだって!」
「んなこと言ったってお前…」
「それなのにどっかの誰かさんは冷たすぎるー!ばかー!あほー!」
「……」