初恋フォルティッシモ
と、叫ぶようにそう言って、どうしても俺に会いたいらしいそいつ。
あまりに耳がキンキンするから、耳からスマホを少し離すけれど…あまり効果はない。
俺は風呂場から出ると、居間に戻りながらユリナに言った。
「…あー、わかった。じゃあ今度会おうな。今度」
「今度っていつ!?」
「次の日曜とかは?俺、地元まで数時間くらい運転して、マジで今帰って来たところだから死にそうなんだよね」
そう言うと、「だから日曜にして」とユリナをいったん落ち着かせる。
俺が死んだら嫌だろ?って。
そしたらユリナは、まだ少し納得がいかないながらも…やがて「うん」と頷いてくれた。
……良かった。とりあえずワガママ姫はわかってくれた。
………しかし。そうかと思いきや、ユリナが言った。
「………ん、わかった。死にそうなら仕方ないね。
でもその代わり、日曜にはたっかい指輪買ってね!ピンクのダイヤモンドがついてるやつ!」
「はぁ!?」
「約束っ!じゃあねバイバイおやすみなさーい!」
「いや、おいちょっと待てって…!」
そして、俺が慌ててそう言って引き留めるも…
「……切りやがったし」
ユリナは、逃げるようにすぐ電話を切ってしまった。
…指輪って、いったいいくらすんだ。
っつかフリーターの俺に言うなよ…。
俺はそう思いながら鞄の中を漁ると、通帳を取り出してそれを開いた。
「……、」
………無謀。