初恋フォルティッシモ
…っつか、マジで面白くねぇし。
俺はそう思いつつ、やがて一気にやる気をなくして、音楽室から離れようとする。
…やめたやめた。
たまに「昼練でもすっか」なんて思って来てみれば、先客がいるし入る気にもなれない。
教室戻ろ。
…しかし。
俺がそう思って踵を返したその直後、中からまたフルートの先輩の声が聞こえてきた。
「…じゃあさ、三島くんは?どうなの?」
「!」
……え?
「三島くんってさ、正直吹奏楽部って感じじゃないじゃん。モロ帰宅部タイプっしょ。青田くんと違って、常にやる気なさそうだし」
俺はふいに聞こえてきた自分の名前を聞くと、思わず歩く足をピタリと止める。
けど…
何だよ、黙って聞いてりゃ好きなこと言いやがって。
どーせ俺は青田とは正反対だよ。
俺は案の定の自分の評価を耳にすると、深くため息を吐いてまた音楽室を離れた。
けど、その瞬間、それを遮るように中から麻妃先輩の声が聞こえてきた。
「いや、三島くんだって頑張ってるよ。青田くんと変わらないくらい」
「…!」
「まぁ最初は確かに結構手がかかったけど、今は楽譜の読み方とか記号とか覚えようとしてくれてるのわかるし、サックスも似合ってるもん。
あたしは、逆にああいうタイプが余計にサックスとか…音楽的に化けると思うんだよねー」