初恋フォルティッシモ
…………
「で?ここまで来たらどうすんだよ」
「そしたらまたココに戻って…」
「あ、これ?」
そして、その日から数日後。
俺は、部活中に青田に楽譜の読み方を教えて貰っていた。
その楽曲は、三年生と最後に一緒に演奏することになるもの。
その本番となる演奏会はまだまだ先だけど、二~三年生が最後のコンクールに向けて練習しているなか、俺達一年生はそれぞれの楽器に別れてその練習をしていた。
…それはいいけど、演奏する曲の流れが複雑すぎてわからないから、俺は青田に教えて貰っているのだ。
誰だよこんな楽譜かいた奴。もっとわかりやすくしてくれよ。
俺はそう思いながらも、青田に教わりながらシャーペンでそれをメモっていく。
そしてペンを走らせながら、青田に言った。
「っつかお前よくこんなのわかるよなー」
「いや、音楽は得意だから」
「…なんか習ってた?」
「お姉ちゃんの影響で、ピアノをちょっとだけ」
「…へー」
…男でもピアノ習うのか。初めて知った。
俺はそいつの言葉にそう相づちを打つと、やがて楽譜にメモを書き終えて青田に言う。
「…っし。完了。サンキュー」
「んーん。別に大丈…」
「っつかまだ覚えられる気しねー。
ここまできたらどこに行くとか、細かい流れってわかんねーからなー。そういう記号の意味とか、麻妃先輩のノートに書いてねぇし」
何で書いてないんだよ。
俺はそう言うと、ふいにその手作りの教科書を手にとって、それをパラパラと捲る。
…とは言え、今のところすげー重宝してるし、もう無くてはならない存在になってるんだけどな。