初恋フォルティッシモ

俺がそう思いながら言うと、その言葉を聞いた青田が不思議そうに言った。



「…ノート?ってか、“麻妃先輩”って呼んでるんだ?」

「そ。何か知らないけどそうなった」

「…知らないけどって」

「ノートは、麻妃先輩が俺にくれた手作り教科書な。これないとワケわかんねぇし」



俺はそう言うと、青田の目の前にそのノートを見せて、それをヒラヒラさせる。

するとそのノートを見て、青田は何故か表情を少し曇らせてしまう。


…何でだ?

ノート無い方が、楽じゃね?だって頭に全部入ってるってことだし。


俺がそう思いながら、「お前はいいよな」なんて言おうとしたら、それを遮るように青田が言った。



「っ…俺は、藤本先輩(麻妃)にコンタクト勧められたよ」

「?」

「メガネより、そっちの方が絶対かわいいって。…ま、かわいいってのはちょっと複雑だけど」

「??」

「…それに、サックス、上手いってすげー褒めてもらえたし。昨日」



青田はそう言うと、何故かわからないけど、突然さっきとは打ってかわって少し強気に俺を見る。

…どうしたんだ?急に。

俺はそれを疑問に思いながら、頭に?を浮かべてそいつに言った。



「……よかったな?」

「!」

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