初恋フォルティッシモ
華木先輩は青田の言葉にそう言って笑うと、まず俺の方に来て言う。
「で、三島くん楽譜の読みはもう完璧になったの?」
「え?ハイまぁ…」
「リズムも?」
「ハイ。後は練習するだけっす」
「そ。じゃあ頑張って。また後で見に来るから」
そう言うと、今度は俺から離れて青田の方に。
そして俺がサックスを手に取ると、隣で華木先輩が青田に言った。
「青田くんはどう?」
「…この連符がまだ…」
「どれ?」
そう言って、二人で楽譜を覗き込む。
青田はどうやら、曲中にある難しい連符がなかなか出来ないらしい。
俺が練習を再開している横で、華木先輩が青田に言った。
「じゃあまずゆっくりやってみようか。あたしが手拍子するから、青田くんそれに合わせて」
「ハイ、」
そんな会話を聞きながら、俺はやっと初めてこの楽譜の練習を開始する。
…麻妃先輩もそうだけど、華木先輩も結構後輩の面倒見がいい。
正直、学生間の先輩っていうのは後輩が困っててもわりと放っておくと思っていたのに。