初恋フォルティッシモ
…………
「さよーならー」
楽器を片付け終えると、その場で皆で一礼していつものように解散した。
いつもの俺だったら、ここで何も躊躇うことなく家に帰って、いつもと同じ夜を過ごすんだと思う。
けど…今日の俺は、違った。
「…三島くん、帰らないの?」
「え、」
解散する場所…音楽室前の廊下の壁に寄り掛かったままでいたら、その時同じ学年の女子がそう声をかけてきた。
…トランペットを任されて吹いている、俺にとって憎い奴。
俺はそんな女子の言葉に、そっけなく言った。
「…帰るよ」
「?…どうしたの?具合でも悪いの?」
…俺はその言葉に返事をするわけでもなく、音楽室に仲良く入っていく麻妃先輩と青田に目を遣る。
…何故か、面白くない。心がモヤモヤしまくってる、マジで。
俺はそう思いながら、ようやく口を開いて言った。
「…別に、」
そう言うと、壁に寄り掛かっていた背中を離して、やっと音楽室を後にしようとする。
…しかも、その時に聞こえてくるのは…女子達が話す、別の声。