初恋フォルティッシモ
「あーあ。藤本先輩羨ましー。これから青田くんと音楽室で二人きりなんて」
「ほんとだよねー」
「でもさ、何気にあのふたり、お似合いじゃない?」
そう話すと、「きゃーきゃー」騒ぎ出す。
…うるせぇ。
そんな会話に、俺は頑張ってそう思ってみても…よくわからない不安は、募る。
…なんだ?コレ…
そう思いながらも、音楽室に背を向けたまま…いつもの階段を下りて、生徒玄関へ。
そこでちょうどバスケ部の仲間に出くわして、久々に二人で帰ることになった。
「っつかさ、お前が吹奏楽とかマジでウケるよなー」
「…」
「しかも何気ここまで続いてるっつーのがな。まぁー吹奏楽ラクそうだしー」
そいつはそう言いながら、俺の隣を歩く。
でも、俺はさっきからずっと黙ったまま。
そいつの話が、不思議なくらいに耳に入ってこない。
…物凄く、音楽室の中が気になっているせいで。
俺がいつまでもその状態でいたら、校門あたりに来た時そいつが言った。
「っつか聞いてんのかよ三島、」
「…」
「…三島?」