初恋フォルティッシモ
「……麻妃先輩も、まだみたいっすね」
やっぱり、もう一度だけでいいから久し振りに麻妃先輩に会ってみたい。
俺がさりげなく麻妃先輩のことを口にすると、華木先輩が言った。
「…ああ~。麻妃ちゃんね。いや、麻妃ちゃんは実は…今日来れないみたいなんだよねぇ」
「!」
「何か、どうしても外せない用事?があるとかで。…あ。もしかして三島くん、麻妃ちゃんに会いたかった?」
華木先輩はふいに俺にそう問いかけると、突如イタズラ顔でニヤリと笑う。
「……え、いや…そんなことは…」
「えええー、ほんとかなぁ?顔が赤いぞ三島く~ん」
華木先輩は俺にそう言うと、からかうように俺の背中をバシバシ叩く。
いや痛いっす先輩、
そう思って「違いますよ」と言いつつも、俺は内心麻妃先輩が来ないことに大きなショックを受ける。
…今日しかチャンスがなかったのにな。
今はもう、どこで何をしているのかすら、わからない人だから。