初恋フォルティッシモ
そう言って俺の名前を呼んで、それでも声が返ってこない俺にそいつが首を傾げる。
「どうした?」っていう声にすら反応出来ないでいたけれど…
俺はやがて覚悟を決めると、顔を上げてそいつに言った。
「っ、ワリ。俺やっぱ音楽室に戻るわ」
「は、何で!ラーメン食ってこうぜラーメン!」
「ラーメンより気になることがあんだよ!また今度な!」
俺はそう言うと、すぐに踵を返して再び生徒玄関へと突っ走る。
後ろでそいつが、「次のラーメンお前の奢りだからなー!」って言ってるけど、上等だ。
急いで生徒玄関に戻ると、靴を履き替えてる時間すらももったいなく感じて、かかとを踏んだまま音楽室へと階段を駆け上がった。
…廊下はもう真っ暗で、階段のところにだけ電気がついている。
「…っ、」
一気に階段を駆け上がると、少しずつサックスの音が近づいて来た。
三階の音楽室までようやく辿りついた時、その場所だけ電気がついているそこへ、俺は躊躇うことなく足を運ばせる。
…走ったせいか、心臓がドキドキいってる。
…にしちゃあ、結構激しすぎないか?けど、そんなことよりも…
俺は音楽室の目の前まで来ると、途端にそのドアを勢いよく開けた。