初恋フォルティッシモ
「…!」
俺は、女とキスなんて今までに一度もしたことがない。
そう言えば、この前読んだ少女漫画に書いてあった。
キスに味はなくて、レモンの香りもイチゴの香りもチョコの香りもしないって。
…唇が想像以上に柔らかい。
これがキスか。
俺がそう感じながらそのままでいたら、やがて状況をはっきり把握したらしい麻妃先輩が、半ば強引に俺から離れた。
「っ……にしてんの!?」
「!」
「なっ、い、いいいいきなり何するの三島くん!!まさか、笑顔とそういう、き、キス…と、勘違いしてるの!?」
「?」
麻妃先輩のその言葉の意味はよく理解出来なかったけれど、それよりもキスをした直後の先輩の顔があまりにも真っ赤になっていることに驚いた。
キスをする前まではそんな顔してなかったくせに、今は「大丈夫っすか?」なんて聞きたくなるくらい頬が真っ赤。
「……先輩、初めて?」
そしてたまらずに俺がそう聞くと、麻妃先輩はもっと顔を赤くして言った。
「うっ、うるさい!」
そう言って、赤い顔を隠すように俺に顔を背ける。
その仕草も、今は可愛くて仕方ない。
だって、もう見て見ぬフリは出来ないんだ。
「………先輩、」
「…?」
「俺……俺、麻妃先輩のこと……」
「…え、」
俺は…
麻妃先輩に、“初恋”をした。