初恋フォルティッシモ
俺はそう思うと、麻妃先輩に言った。
「先輩って、好きなアイドルとか…歌手いるんすか?」
俺が何気なくそう聞くと、麻妃先輩が買うCDを手にしながら答える。
「え?好きな歌手…うぅ~ん……ないなぁ」
「じゃあ、好きな芸能人とか」
「ええー、んー……あ、ドラマとかはよく見るよ。赤井英人くんっていう若手俳優いるじゃん。カッコイイよね」
「…へぇ」
すっげぇイケメンきたー。
俺は麻妃先輩の口から出るその名前に内心そう思いつつ、適当に相槌を打つ。
赤井英人って確か、最近人気が出て来て色んなドラマとか映画に引っ張りだこの超イケメン人気俳優だ。
っつか、麻妃先輩、「カッコイイよね。」って言われても、俺は絶対同意できないぞ。
俺はそう思うと、内心複雑になりながらも麻妃先輩に意地悪く言った。
「あー、じゃあ、あれだけイケメンだと色んな女に手出してますね、絶対」
「え、誰?赤井くん?……そうかなぁ」
「絶対そうっすよ。芸能人なんて、どれだけ表で良い人ぶってても、裏じゃ闇だらけっすから」
「……」
俺は適当な言葉を並べてそう言うと、別に赤井英人を嫌っているわけじゃないけど、そうやって貶(ケナ)してしまう。
…麻妃先輩は、ああいうタイプが好きなのか。
長身で、いつもニコニコしてる爽やか系イケメン。
しかし、俺が赤井英人を貶したところで、麻妃先輩がやがてまた口を開いて、ふと俺に問いかけてきた。
「……三島くん、」
「?」
「何か、怒って…る?」
「!!」