スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
しかし数日後、彼女はあっさり黒髪にしていた。


「これでいい？」


より一層の自信をその表情に湛え、彼女は再び俺の前に現れた。
開いた口が塞がらないとはこの事だ。


「真面目そうな子が好みなんでしょ？」

「いや、まぁ…あの時はそう言ったけど」


茶髪全盛の時代にトップモデルが黒髪にするなど言語道断だと、所属事務所に随分叱られたらしい。

しかしカレンのこの行動が後に若い女子の間で黒髪ブームを巻き起こす事となったのだった。


一モデルが世間に与える影響力を見くびっていた。
俺の一言が社会現象になってしまうとは。


「そのうち好きになってくれればいいの。あたしと付き合って？リョウちゃん」

「リョウちゃんて呼ぶな。」


何だこいつ。
黒髪＝真面目、という思考こそ浅はかでバカっぽいが、どこか憎みきれずに吹き出してしまった。


「……変な女。」


首をかしげた黒髪のカレンは、呆れるほど綺麗だった。
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