スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
その日からだ。
自分が描くイメージと実際撮影した写真の間に、僅かな誤差が生じるようになったのは。


思い通りに撮れない苦痛は想像以上だった。


たかが元カノとの再会に心をかき乱されているのは明らかだ。
相手はもう既婚者だというのに。
中学生じゃあるまいし、そんな自分に吐き気がした。


しかし納得いかなくても撮り続けるしかない。

個展の開催も決まったばかりだ。


せめて次の撮影日まで、カレンの事を思い出したくなかった。
常に仕事で頭をいっぱいにしておきたかった。
別れた時と同じように。


細切れに睡眠をとりながら、山積みの仕事を次々こなした。


こなせている、と自分では思っていた。
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