スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

二日に分けて行われたカレンの撮影は、予定通り今回で終了した。

ヒナは約束を守り、スタジオの隅で子ども達に絵本を読んであげている。

出版社の担当との打ち合わせを終えた途端、カレンがそっと近付いてきて


「リョウちゃん。これ」


俺のジャケットを差し出した。
前回の撮影終わり、泣いているカレンの肩にかけたままになっていたものだ。


「あぁ、」


受け取ろうとすると、カレンはサッと手を引っ込めた。


「返さなくてもいい?」


いたずらっ子のような上目遣い。

たぶんこっちの出方次第で、その言葉は冗談にも本気にもなるんだろう。

でも、俺はもう迷わない。



「……ダメだよ」
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