スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「……だよねぇ。」


ジャケットを羽織った俺を見てカレンはふにゃり、と笑う。

微かな胸の疼きを無視できる程度には冷静でいられた。


「この前はごめんね。変な事言っちゃって」


カレンが小声で言う。


「マタニティブルーってやつだったのかな。でももう大丈夫。この子のために強くならなきゃって思ってる」


愛おしそうに腹を撫でるカレンの横顔に、先日の暗さはもう残っていなかった。


「リョウちゃん」

「ん?」

「あたし、幸せだよ。」
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