スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
君は俺の手の届かない所で
誰かの『妻』を。
そして『母』を生きていく。


「……そっか。頑張れ」

「うん。」


子どもが生まれたら生活も一変し
そのうち、俺の顔すら思い出せなくなるんだろう。


それで良かった。



「ずっと応援してるからね。リョウちゃんの事」


マネージャーに声をかけられたカレンは
じゃあ、と俺に背を向ける。



「カレン!」



振り返った彼女は、驚いた顔をしていた。



潤んだ瞳が好きだった。
濡れた唇が好きだった。

強気なワガママが
底抜けの明るさが
俺の名を呼ぶ声が


好きだった。



「……リョウちゃんて呼ぶなって言ってんだろ。」
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