スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

道路に激しく背中を打ち付け、一瞬息が出来なくなった。
周囲の人々があちこちで悲鳴をあげる。

すぐ横を走り抜ける車の音が聞こえた。



「あ…っぶねー」



目を開けると、真っ黒なスーツ姿の男の人が私に覆い被さっていた。
髪をオールバックに固め、サングラスをかけている。



「大丈夫？」



顔を上げたその人は私の体を跨いだまま四つん這いの姿勢で聞く。
サングラス越しだけれど、たぶん目が合っているんだろう。私は何度も頷いた。


歩行者用信号はいつの間にか赤に変わっていた。

見知らぬ彼に手を引かれ、小走りで横断歩道を渡りきる。



「どーも、お騒がせしました！」



遠巻きにこちらの様子を伺っている通行人に、彼は明朗な声で言った。