スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「あ、の…?」
横断歩道は渡り終えたのに、彼は私の手を引いたままずんずん歩いていく。
声をかけても応答はない。
どうしていいかわからず、広い背中を不安な気持ちで見つめた。
人通りの少ない雑居ビルの前で、彼はようやく歩くのをやめ振り返った。
「お嬢さん。信号は守りましょうね?」
その声で初めて気が付いた。
同時にとてもホッとした。
「一條さん……!」
服装と髪型で雰囲気が変わっていたが、私を助けてくれたのは一條さんだった。
サングラスをずらし、困ったように笑っている。
「一條さん、じゃないよ」
そう言って私の額を指で弾いた。
「誰か立ち止まってんなーと思ってよく見たらヒナちゃんなんだもん。信号変わっても全然気付かないし、向こうから猛スピードで車は突っ込んでくるし。本気で焦ったわ。知り合いが目の前で車にはねられるなんて、一生モンのトラウマ背負い込むとこだったよ」
横断歩道は渡り終えたのに、彼は私の手を引いたままずんずん歩いていく。
声をかけても応答はない。
どうしていいかわからず、広い背中を不安な気持ちで見つめた。
人通りの少ない雑居ビルの前で、彼はようやく歩くのをやめ振り返った。
「お嬢さん。信号は守りましょうね?」
その声で初めて気が付いた。
同時にとてもホッとした。
「一條さん……!」
服装と髪型で雰囲気が変わっていたが、私を助けてくれたのは一條さんだった。
サングラスをずらし、困ったように笑っている。
「一條さん、じゃないよ」
そう言って私の額を指で弾いた。
「誰か立ち止まってんなーと思ってよく見たらヒナちゃんなんだもん。信号変わっても全然気付かないし、向こうから猛スピードで車は突っ込んでくるし。本気で焦ったわ。知り合いが目の前で車にはねられるなんて、一生モンのトラウマ背負い込むとこだったよ」