スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「うっっっま!!」
数十分後、一條さんと私は原宿にあるスイーツ店の個室で向かい合っていた。
「ヒナちゃん、こっちも食べな!」
「は、はい……」
私と一條さんの前にそれぞれ置かれているのは、うず高く積まれたパンケーキだった。
とても一人で食べきれなさそうな量だが、どうやらこれで一人前らしい。
「いやね、ずっと食ってみたいなーと思ってたのよ!流行ってるしさ。でもまさか男一人で入る訳に行かないじゃん?こういうの付き合ってくれる友達も思いつかないし。だから今すっげー嬉しいよ、ありがとねヒナちゃん!」
一條さんはハイテンションで喋りながら、ものすごいスピードでパンケーキをたいらげていく。
呆気にとられつつフォークの先ですくって食べたパンケーキは、確かに夢のような美味しさだった。
「わー、美味しい!」
「でしょ?」
一條さんはにこにこと私を見つめている。
人気俳優と二人っきりでこんなに美味しいものを食べているなんて、本当に人生って何が起こるかわからない。
贅沢すぎて罰が当たりそうだ。
胸に浮かんだ感想をそのまま伝えると、一條さんは大きな声で笑った。