スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

side.春木

「あ、車にレフ板忘れた。悪いけど取ってきて」


ハイ、とぎこちない返事を残しヒナはスタジオを出て行った。
岳にからかわれたせいか両耳が真っ赤に染まっている。


「デートじゃないってさ。拒否された」


岳が笑いながら俺に言う。


「俺、この前映画のロケだったんだけどさ」

「ん」

「何か煮詰まってたんだよな。」


久しぶりに会った岳は少し痩せていた。
仕事上の苦労もいろいろあるんだろう。

親友の初めての主演映画。
そのパンフレット撮影を任せてもらえた事は素直に嬉しかった。


「監督のイメージ通りに演じようとするんだけど、上手くいかないんだ。体が動かない。ドラマは経験あるけど、映画の主役ってまた難しいもんなんだな。俺がOK貰えないから撮影も押してさ。休憩時間に気分転換しようと思って街を歩いてたんだ。で、ヒナちゃんに会った」


この話はどこに着地するんだろう?
俺は黙々と撮影準備を進めながら、岳の言葉に耳を傾けていた。
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