スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
一條さんがメイクの時間だと言って去った後、私と春木さんは撮影の準備を再開した。
入念にレンズをチェックする横顔に問いかける。


「……私の見た目が子どもっぽいから、雛みたいだって意味だったんですね?」

「ん。まぁピーピーうるさいっていうのもあるし」

「なっ、」


ヒ、ヒドイ……聞かなきゃ良かった。


「まーいいじゃん。敵が出来にくい顔って事で」

「はぁ…」

「そんな事より水買ってきて」

「へ、」

「コントレックス。」


何の脈絡もない春木さんの命令にも、当然私は従わなければならない。
こちらを見もしない彼に多少不満も感じつつコンビニへ駆け出した。
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