スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「春木さん。見て下さい」
事務所でそれぞれ仕事をしていたある日、ヒナに声をかけられ顔を上げた。
「ん?」
「これ、この前撮ったんですけど」
ヒナは自分のデジタル一眼を俺に差し出す。
そこに映っていたのは、空から舞い落ちる粉雪だった。
「おお。」
ヒナは最近風景写真の勉強も始めたらしい。
現場に同行するうち、撮影技術も少しずつ吸収していたようだ。
見せられた写真は空ではなく、雪の白さの方がより強調されていた。
彼女らしい素朴な一枚に仕上がっている。
「良いね、雰囲気出てる。ピントもぴったりだ」
「ほんとですか?」
「まぁ俺ならもう少し明るくするけど。でも悪くない」
カメラを返すため立ち上がった時
彼女の首筋に赤黒い火傷の痕を見つけた。