スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
風景写真家の春木さんにとってうってつけといえばうってつけの依頼だが、少々無茶な要望に春木さんも苦笑している。


「じゃあとりあえず何パターンか作ってみますか。」

「ありがとうございます!」


次の仕事の時間が迫っていた春木さんは早く話を切り上げたいようだった。
納期などを確認し、立ち去る男性を二人で見送った。




「ざっくりした依頼でしたね。」


急いで現場へ向かう道すがら春木さんに言った。
遅刻しないよう早足で歩く。


「アポなしの飛び込みで来る客って、ああいうの多いんだよな」


春木さんが頭を掻く。


「とりあえずあの町の資料、集められるだけ集めておいて」

「わかりました。」



カメラマンとアシスタント。

私達の関係は
すっかり元通りだった。


両想いかもしれない、なんて
おめでたい勘違いが出来るほどもう子どもじゃない。


子どもじゃないから
あのキスも無かった事にするしかないんだ。
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