スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
スタジオへ戻ると、既に撮影は始まっていた。
緊張感漲る張りつめた空気と連続して光るフラッシュが、扉を開けた瞬間から波のように押し寄せる。

スタジオの中央にはドラマのキャストである役者さんたちが並び、カメラに向かってポーズをとっていた。
体を滑り込ませるようにスタジオ内に入りシャッターを切り続ける春木さんに近付く。


「春木さん。お水です」

「ん、」


撮影が一瞬途切れた隙を狙い、水を差し出した。

春木さんは乱暴に私の手からそれをひったくったけれど
今度はちっとも腹がたたなかった。


「亀山さん、もう少し顎引いて……岳、じゃない一條さん。あと1ミリ右に顔傾けて下さい」


淡々と、でも的確に指示を出しながら、真剣な目でファインダーを覗く春木さんが



「はい、そのまま動かないで。撮ります」



とてつもなく格好良かったから。
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