スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
降ったばかりの雪が、アスファルトにうっすらと。
本当にうっすらと白いベールをかけていた。


踏まれるとたちまち溶けて消えてしまうそれに、例えようのない切なさを感じる。


一歩前を行く春木さんの靴跡ばかり眺めながら歩いていたから


「いって、」


信号待ちで立ち止まった彼の背中に激突してしまった。


「え。何で頭突きすんの?」

「す、すみません。滑っちゃって」

「北国出身だろ。雪なんて慣れっこなんじゃないの?」


笑いながら前方に視線を戻す春木さんの肩にも、一粒雪が舞い降りた。
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