スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
ニューヨークへ発つ前に一段落させたいからと、最近の春木さんはいくつかの仕事を並行して進めている。

今日は先日依頼を受けたPRポスターの町へ撮影に行っていた。

私はひとり事務所に残り、溜まりに溜まった雑務の処理に追われていた。



夕方になり辺りが暗くなってきても、春木さんはまだ戻らない。

ひたすらパソコンのキーボードを叩いていると、事務所の電話が鳴った。


「はい。春木フォトワークス……」

『ヒナちゃん?俺。一條だけど』

「あ!お疲れさまです」


受話器の向こうから聞こえてきたのは意外な声だった。


『リョウいる?携帯繋がらないんだ』

「今日撮影で。まだ帰ってきてないんです」

『マジ?』


一條さんが肩を落とした気配が伝わってきた。
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