スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「助かったー!サンキュー!」


ニット帽を手渡すと、一條さんはとても喜んだ。
点けられたままのハザードランプの音がカチカチと車内に響く。


「今日は事務所で留守番なの?」

「ハイ。春木さんの帰り待ちです」

「あ、そういえば新聞で見たよ。リョウまた何か賞穫ったんでしょ?」


春木さんの受賞のニュースは日本でもそれなりに取り上げられていた。


「そうなんです!」

「ははは。嬉しそうだね」

「その副賞で、来月初めてニューヨーク行くんです。」


頬のゆるみを抑えきれないまま言った。


「ヒナちゃんも行くの?」

「はい」

「……リョウと二人で?」

「はい」


へぇ、と呟いた一條さんは
ハンドルに視線を落とした。



「そっか、リョウと二人っきりか……」



こつこつとハンドルを叩く指先。
急に口数が少なくなった彼を不思議に思いながら、その整った横顔を見つめる。
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