スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「ヒナちゃん」
長かった撮影が終わり機材を片付けていると、後ろから声をかけられた。
一條さんが小道具のソファにもたれて手招きで私を呼んでいる。
「一條さん!お疲れさまでした」
「ちょっとこっちおいで。」
春木さんがまだ現場の監督さんと話し込んでいるのを確認し、立ち上がる。
一條さんは衣装もメイクも撮影時のままだった。ワックスで逆立てられた髪から仄かにフルーツの香りがする。
「疲れたでしょ?リョウの撮影っていつも長くてさ。こっちもヘロヘロ」
「でも一條さん、素敵でした。」
カメラの前に立った彼の、巧みに使い分けられた表情を思い出しながら言う。
改めて役者という仕事の奥深さを感じた。
「でしょ?」
一條さんは白い歯を見せて二カッと笑う。
この人懐っこい笑顔で日本中の女子を虜にしてるのかぁ……。
どうでもいい事をぼんやり考えていると、ふっとため息を吐いて一條さんは切り出した。
「あいつの事、よろしく頼むね。ヒナちゃんも大変だと思うけど」
「え?」
「リョウだよ。マイペース過ぎて付いていけない時もあるかもしれないけどさ」
私たち二人は自然と春木さんに目をやった。
春木さんは少し離れた所で監督さんの言葉に何やら頷いている。
「仲良しなんですね。春木さんと」
「うん。同じ歳だし、この業界に入ったのも大体同じくらいだしね。あいつは駆け出しカメラマンで、俺は小さい劇団の役者で。」
まぁリョウはあっという間に売れたけど、と話す一條さんは昔を懐かしむような優しい目をしていた。
長かった撮影が終わり機材を片付けていると、後ろから声をかけられた。
一條さんが小道具のソファにもたれて手招きで私を呼んでいる。
「一條さん!お疲れさまでした」
「ちょっとこっちおいで。」
春木さんがまだ現場の監督さんと話し込んでいるのを確認し、立ち上がる。
一條さんは衣装もメイクも撮影時のままだった。ワックスで逆立てられた髪から仄かにフルーツの香りがする。
「疲れたでしょ?リョウの撮影っていつも長くてさ。こっちもヘロヘロ」
「でも一條さん、素敵でした。」
カメラの前に立った彼の、巧みに使い分けられた表情を思い出しながら言う。
改めて役者という仕事の奥深さを感じた。
「でしょ?」
一條さんは白い歯を見せて二カッと笑う。
この人懐っこい笑顔で日本中の女子を虜にしてるのかぁ……。
どうでもいい事をぼんやり考えていると、ふっとため息を吐いて一條さんは切り出した。
「あいつの事、よろしく頼むね。ヒナちゃんも大変だと思うけど」
「え?」
「リョウだよ。マイペース過ぎて付いていけない時もあるかもしれないけどさ」
私たち二人は自然と春木さんに目をやった。
春木さんは少し離れた所で監督さんの言葉に何やら頷いている。
「仲良しなんですね。春木さんと」
「うん。同じ歳だし、この業界に入ったのも大体同じくらいだしね。あいつは駆け出しカメラマンで、俺は小さい劇団の役者で。」
まぁリョウはあっという間に売れたけど、と話す一條さんは昔を懐かしむような優しい目をしていた。