スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「あぁ。そういや着信残ってたな」


春木さんはジーパンのポケットから携帯を取り出し、


「何か言ってた?あいつ」

「……いえ?何も」


あぁそう。とドアノブに手をかけた。


「鍵開けっぱなしじゃ……ん?」


私に背を向けかけた春木さんのコートの裾を、思わず掴んでしまった。
気付いた彼が振り返る。


「どうした?」


春木さんにだけは知られたくなかった。
でも一人で抱えきれそうもなかった。

いろいろな想いが交錯し、頭はひどく混乱している。


「……」


もう一度ぎゅっ…と握り、コートから手を離す。
これだけで、おまじないみたいに心が落ち着いていくのがわかった。


改めて実感させられる。
春木さんはやっぱり、特別な存在だと。



「何でもないです。ごめんなさい」



ひとつ深呼吸をし、笑ってみせた。





けれど、この夜起こったことは結果的に全て春木さんに知られる事となる。



一條さんと口づけを交わす私の写真が
週刊誌に掲載されたからだ。
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