スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
夜になるのを待ち、事務所へ向かった。

ビルの周りにマスコミは一人もいなかった。
春木さんは外国へ発ったし、アシスタントの存在も否定したからだろう。


一日ぶりに事務所のドアを開けると、湿った空気がむんと押し寄せた。



「……」



室内をゆっくりと見渡す。

二週間あれば、残った仕事を片付け自分の荷物も運び出せるだろう。

思考回路がほぼ停止した今の状態は、単純作業をこなすのにちょうど良い。

空っぽの心のまま棚の整理に手を付けた。
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