スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
ふと数冊のアルバムが目に留まる。
火事になった個展会場から私が持ち出したものだ。

そっと手に取り、背表紙の埃をはらう。


見てしまったら、また辛くなるから
開く事なく棚に戻した。



『ありがとう。』



あの日、
薄れる意識の中で聞いた春木さんの声は
未だ耳に残っている。



どうしてこうなってしまったんだろう。
どこで間違えたんだろう。




目頭が熱くなる。
考えないようにしていたのに。


うっかり涙腺が緩みそうになり、慌てて洟をすすった。
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