スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
春木さんのアシスタントを辞めなければならなくなった以上、東京に残る理由は無い。

別の仕事を見つけてまで居座りたいと思うほど、この街に思い入れも無かった。
アシスタントとして働く為だけに上京してきたのだから。



『岳の所に行ってもいいし、地元に帰ってもいい。』



春木さんの言葉を思い出す度に、気持ちがざらざらした。



この数日、一條さんから何度か携帯に着信があったのは知っていた。

でも電話には出なかった。


今、一條さんに会ったら
彼の好意に甘えてどこまでも流されてしまう。

そんな気がした。



『俺にしときな?』



一條さんとの二度目のキスは
確かに私を安心させた。


春木さんへの想いを捨てきれない私の涙を
彼は優しく拭ってくれた。



私は
どうするべきなんだろう。



答えを出さないまま彼に甘えるのは、卑怯だと思った。
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