スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
成田から直行便で13時間近くのフライトを経て、春木さんと私はパリのシャルル・ド・ゴール国際空港に降り立った。
座りっぱなしですっかり固まった足の筋肉を叩きながら、ここでも早足の春木さんに必死で着いて歩く。


「リョウ!」


入国審査を終えた私たちに手を振っていたのは、フランス人の男性だった。


「ジル!」


春木さんも笑顔で駆け寄り、さっそく二人はハグをする。


「まさか本当に来てくれるとは。驚いたよ」

「何だよ。ジルが誘ったんだろ」

「何年前の話だ。相変わらず多忙なんだろう」

「まあね」

「こちらは?」


春木さんの後ろから顔を出した私を見て、男性が春木さんに聞いた。


「俺のアシスタント。ヒナ・タミヤ」

「あぁ、」


男性は私の側へ歩み寄り、大きな手を差し出した。


「よろしく、ミス・タミヤ。ジル・アルヴェスです」

「初めまして。日本語がお上手なんですね」

「十年以上日本でカメラマンをしていたからね。リョウに出会ったのも日本なんだ」


ジルさんは首から提げたカメラを指さし、優しい笑顔でそう言った。澄んだ青い瞳がとても綺麗だ。


「駐車場に車を停めてあるから、行こう」
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