スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「そういう事かよ……!」


彼女からの突然の電話。
不安気な声。
電源が切られた携帯。


これで全てが繋がった。



ざわざわと胸が波打つ。


今どこにいる?無事なのか?


これ以上早く走れない事がもどかしく、気持ちばかりが焦っている。


膝に手をつき、上がった息を整える。
乾いたアスファルトに汗の粒が滴り落ちた。

ヒナのアパートにキャリーケースを忘れてきた事を思い出した。
でももうどうでもいい。


俺が帰国するまでに荷物を片付けておくよう命じたはずだ。
今なら、まだ事務所にいるかもしれない。


万に一つの可能性に賭け、足がちぎれるかと思うほど走り続けた。
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