スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
ビルの前には先客がいた。

横付けされた白のジープから誰かが降りてくる。
今まさに扉を開けて中に入ろうとしている、見慣れた背中に声をかけた。


「岳!!」


振り返った岳は目を丸くして俺を見た。


「リョウ。帰ってきてたのか?」

「最近ヒナに会ったか?」


乱れた息のまま問いかける。


「え?」

「ヒナと最後に会ったのいつかって聞いてんだよ」


俺の勢いに圧倒されたのか、岳は一瞬言葉に詰まった。


「一週間前…かな」

「一週間?」


ヒナが俺に電話を寄越した日よりも前だ。


「それから全然電話が繋がらないんだ。電源が切られてるみたいだから、さすがに心配になって」

「家には行ったか?」

「いや?まだ仕事残ってるって言ってたから、とりあえずこっちに……」


ズボンのポケットをまさぐり、岳の話を遮るように二枚の写真を突き出した。
手に取った岳の顔色がみるみる変わる。


「なんだ?この写真」

「ヒナのアパートの玄関に落ちてたんだよ」

「誰がこんな……どういう事だよ!?」

「知るか。ヒナが俺に電話かけてきたんだよ、何日か前に」

「え?」


岳と話しながら事務所の鍵を取り出し、オートロックを解除する。


「その時あいつちょっと変だったから、さっき一応見に行ったんだよ。そしたらこれが落ちてた」

「だから電話も切ってるのか……」

「家に行っても応答が無かったから、俺もこっちを見に来たんだ」
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