スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
本や映画の中でしか見た事のない有名なシャンゼリゼ通りや、凱旋門。中世の香りを残した美術館やおしゃれなパン屋さん…。

初めて歩くパリの街並みに、私は興奮しっぱなしだった。
颯爽と歩く人々までもがたまらなく格好いい。
首から提げた自分のカメラのシャッターを夢中で切った。


「……ここ。いいな」


春木さんは相変わらずマイペースに、自分の感覚に忠実に撮影スポットを見つけてはカメラを構えた。
出される指示に従い、私もそれをサポートする。

メトロやバス、そして何より自分の足を駆使し、私たちはパリの街を動き回って撮影を続けた。


「いい時間になってきたな」


春木さんが空を見上げて呟いた。西の空はもうオレンジ色に染まりはじめている。


「行きたい場所があるんだ。」
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