スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
何度も泣かせた。
最後まで傷つけた。

今更、俺に何が言えるだろう。


『戻ってこい』なんて、



「……アホか。」



乾いた笑いが口から漏れる。



ヒナの意識が戻った時
側には、岳がいるだろう。


岳の存在は、ヒナの中でも大きくなっているに違いない。
寝言で名前を呼ぶほどだ。


そのままあいつを選べばいい。


大切にされて、誰より幸せになればいい。


それは俺自身が望んだ結末のはずだ。



「……」



降り出した雨が肩を打つ。
視界いっぱいに傘の花が咲く。



中途半端な思い出も、言えなかった言葉も。
情けないほど痛む胸も、俺がつくった彼女の傷も。


この雨に浄化されて、全部無かった事になればいいのに。


そんな事ばかり考えていた。
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