スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「はい、これ。」


一條さんは自分の鞄の中から何かを取り出し、私に手渡した。
有名なご当地キャラクターのキーホルダーが揺れる。

春木さんの事務所の合鍵だった。


「ヒナちゃんの鍵でしょ?事務所の扉に刺さったまんまだったから、リョウに内緒で持ってた」

「一條さん……」

「きっと必要になるだろうなと思って。」



一條さんは知っていた。
私がどうしても彼を選べない事を。



「ずるいのは俺なんだ。二人が両想いな事、気付いてたのに」

「……へ、」

「悔しくてわざと横入りした。」



繰り返す瞬きによって、睫毛に付着した涙が落ちる。


今。

今、なんて?



「わかるよ。すぐわかる。何年リョウとつるんでると思ってるんだよ」



ぽかんとしている私の気持ちを見透かしたように、一條さんはふはっと笑った。

いつかと同じように、私の額を指で弾く。



「あいつもヒナちゃんの事が好きだよ。」


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