スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
呆気にとられている春木さんを、ほとんど睨むように力を込めて見つめ続けた。

そのままどれほど時間が流れたんだろう。


「……はは、」


ふいに彼の頬が緩む。


「はは。あははははっ」

「何で笑うんですか!」

「力抜けるわー……」


春木さんの笑いが止まるのを複雑な気持ちで待っていると、彼はやがて膝についていた手を離して体を起こした。


「つくづく変なヤツだよなぁ。」


その穏やかな笑顔を見た時
私の心臓は大きく脈打った。



「……そうだな。」



春木さんは小声で呟いて、再び丘の下の夜景に目をやっていた。
私は夜景を眺めるふりをして、こっそり春木さんを見ていた。


優しい静寂がニ人を包む。



今、この瞬間を
そのまま写真に収めてしまいたかった。

あなたに少しだけ近づけた気がした、この夜を。
宝物みたいに大切に保管して、何度も何度も思い出したかった。
< 32 / 333 >

この作品をシェア

pagetop