スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
そう言われた途端、穏やかに凪いだ海のように心がしんとした。

春木さんの声は、いつだって特別な温度で私の耳に届く。



『一番好きな人が自分を撮ってるって想像するんだって。』

『好きな人には可愛い顔見せたいって思うじゃない?』



矢吹さんの言葉が蘇る。



……そっか。

簡単な事なんだ。




「うん。だいぶ表情ほぐれてきたな。もう一枚。一瞬息止めて」



お腹に力を入れて指示通りに息を止めると、まばゆいフラッシュが連続して私を照らした。

春木さんは頷きながら、私にだけ見える角度で微笑む。
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