スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
着工すると連絡が入ってから二年の歳月を経て、オーナーの新しいギャラリーは都内にオープンした。


あの火事で流れた春木さんの個展は、約束通りそのギャラリーで一番最初に開かれた。

春木さんも昔から目をかけてくれていたオーナーとの約束を守り他の誘いを断り続け、今回やっと初の個展が実現したのだ。


白を基調とした明るいギャラリーに、天窓から日が差し込む。
その真新しい壁一面に、春木さんの写真が飾られている。



「すごい人だね。リョウはどこ?」

「あ、この先にいると思います」

「そうなんだ。ちょっと冷やかしてくる」



何も変わらない笑顔で、一條さんは私に手を振り会場の奥へと消えた。


「いい匂い……。」


貰った花束は香りをもう一度楽しんだ後、会場の入り口に飾った。
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