スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
昨日から始まった春木リョウの個展は、全力で準備してきた甲斐があり業界の関係者とお客さんで大変な賑わいを見せていた。

アシスタントの私も会場の受付や案内など、来場者への様々な対応に追われて会場内を駆け回っていた。


「あの。すみません」


廊下でギャラリーのスタッフに声をかけられる。


「何か、カメラ雑誌の方が取材に来てて。アシスタントさんに話聞きたいそうなんですけど」

「はーい。今行きます!」


スタッフの方にお礼を言って入口に向かう。
春木さんも私も、昨日からこの類の取材を何件も受けていた。



入口には、カメラを下げた男性と記者と思しき男性が二人で立っていた。


「すみません。お待たせしました」

「いえいえ。大盛況ですね、お忙しいところすみません。××という月刊誌なんですが、お話伺えますか?」

「はい。春木はまた別の取材を受けているんですが、私で良ければ。」


それぞれに名刺を渡され、私も丁寧な手つきで名刺を差し出した。
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