スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「ん、」
ふと肩に重みを感じ、窓の外にやっていた視線を隣へ移す。
離陸直後に寝入ってしまったヒナが完全に俺の肩に頭を預けていた。
……枕代わりにするなっつの。
揺り起こそうかと思ったが、穏やかな寝息を聞いているうちにそんな気も失せて
そのまま深くシートに沈み込む。
ヒナが家を抜け出して一晩中街をうろついていた事を知ったジルは絶句していた。
あの時のジルの顔を思い出すと今でも笑いがこみ上げてくる。
信じられない、と何度も呟いた後
「あんまり無茶させるなよ。リョウ」
ジルは俺にそう耳打ちした。
もうパリの街はとっくに遠ざかり、窓の外にはどこまでも白く白く雲が広がっている。
俺はもう一度疲れきって眠るヒナを見た。
よく他人、しかも男の肩でこんなにぐーすか眠れるもんだ。
「……今日だけだからな。」
彼女の髪からただよう甘い香りに鼻をくすぐられながら
俺も目を閉じた。
……あいつは
こんな風に俺に甘える事なんてなかったな。
微かに蘇りかけた記憶は
蜃気楼のようにすぐ消えた。
ふと肩に重みを感じ、窓の外にやっていた視線を隣へ移す。
離陸直後に寝入ってしまったヒナが完全に俺の肩に頭を預けていた。
……枕代わりにするなっつの。
揺り起こそうかと思ったが、穏やかな寝息を聞いているうちにそんな気も失せて
そのまま深くシートに沈み込む。
ヒナが家を抜け出して一晩中街をうろついていた事を知ったジルは絶句していた。
あの時のジルの顔を思い出すと今でも笑いがこみ上げてくる。
信じられない、と何度も呟いた後
「あんまり無茶させるなよ。リョウ」
ジルは俺にそう耳打ちした。
もうパリの街はとっくに遠ざかり、窓の外にはどこまでも白く白く雲が広がっている。
俺はもう一度疲れきって眠るヒナを見た。
よく他人、しかも男の肩でこんなにぐーすか眠れるもんだ。
「……今日だけだからな。」
彼女の髪からただよう甘い香りに鼻をくすぐられながら
俺も目を閉じた。
……あいつは
こんな風に俺に甘える事なんてなかったな。
微かに蘇りかけた記憶は
蜃気楼のようにすぐ消えた。