スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
西澤さんの撮影は滞りなく進んだ。

髪を緩く巻き、頭に花冠を乗せて。
白い衣装に包まれた彼女は、カメラに向かってくるくると表情を変える。


「あと30度、体ひねって。目線こっちのままで」


膨らんだお腹が少しでも目立つように、春木さんは細かく指示を出していく。


「えー?難しいよ、リョウちゃん」

「いいから。やってみて」


西澤さんが少しはにかんで笑うと、春木さんも表情を緩ませた。


「腰に手当てて……そう。もうちょっとだけ顎引いて」


春木さんが頭の中で描くイメージを、西澤さんは着実に形にしていく。
二人の息は不思議なほどぴったりだった。

周りにこんなに人がいるのに、誰も入り込む余地がないくらい
二人だけの世界が確立されていた。


「いいね。綺麗だ」


春木さんの言葉に西澤さんは顔を綻ばせた。
その瞬間、またシャッターが切られる。

レンズ越しに見つめ合う春木さんと西澤さんは、まるで

まるで……



「……綺麗だ。」



春木さんが小さく繰り返したその言葉は
たぶん、私にだけ聞こえていた。
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