スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
合間に少しだけ設けられた休憩時間。
私はロビーに置かれた自動販売機の前にいた。

ごとん、と出てきた飲み物を取り出し、しゃがんだまま頬に当てる。
目の覚めるような冷たさが心地良かった。

再びお金を入れ、春木さんの飲み物を選んでいると。


「ヒナちゃん?」


聞き覚えのある声に振り返る。黒の革ジャンを着た男の人が立っていた。
サングラスの向こうに大きく見開かれた目が覗く。


「一條さん!」

「お、ちゃんと覚えてた。偉いぞ」


笑いながら近付いてきた一條さんはサングラスを外し、革ジャンの胸ポケットにしまった。


「久しぶりだね。何してんの」

「撮影中なんです。Cスタジオで」

「マジで?俺も雑誌の撮影だよ、Fスタだけど。リョウも来てるの?」

「はい。」

「このジュース、リョウの金?」


一條さんは私がお金を入れたままになっている自販機を指さした。
頷くと何のためらいもなく缶コーヒーのボタンを押す。


「じゃ、おごってもらお。」


無邪気ないたずらに吹き出してしまった。

一條さんの飾らない人柄は、相変わらずとても魅力的だ。
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