世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「えっ...」


青柳颯太の言葉がすんなり入って来なかった。


「見えない色が見えるほどのものだ。摂取しすぎればさすがに体に何も起こらないわけがない」


信じ難く、信じたくない。


「金平糖は、多分あと一つ。俺が殴った理由になったあの日天馬が食べた金平糖は、残りの二つのうち一つだったんだ」


もう、どうすれば良いのか分からない。
いやきっと、考えたってどうしようもないのかもしれないけど。

でも、これだけは分かる。

坂瀬くんが何とも色を見たいと望んで金平糖を食べてしまったのは、私のせいなんだ、と。

私が自分が綺麗だと思ったものを、坂瀬くんに押しつけてきた。

綺麗な世界を見て涙を浮かべる少女の話。
そんな小説を私に紹介されたとき、どんな気持ちだっただろう。

私が興奮して翡翠の絵を見せたとき、どれだけ苦しめただろう。

色が見えない坂瀬くんは、小説の中の少女に劣等感を覚えただろうか、羨んで苦しんだだろうか。

色が綺麗なのだと話され、自分には周りが見えているものが見えないと、現実を突きつけられ、絶望を知ってしまっただろうか。
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