世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
何てことをしてしまったんだろう。

私は坂瀬くんを傷つけてばかりだった。

いつも周りを笑顔にする坂瀬くんの笑顔。
薄笑いのように見えるその笑顔が、私は好きではなかったはずなのに。

いつの間にか、その笑顔に甘えていた。

優しい坂瀬くんに、甘えていた。

彼は何を言っても、何を教えても喜んでくれた。
それは坂瀬くんの優しさ。

色が見えない。
それを隠して、無理矢理笑ってきたんだろう。

坂瀬くんは苦しんでいた。
その身に余るほどの、苦しみに、耐えながら笑っていた。

そんな坂瀬くんに、私は縋ろうとした。
同い年で、強がりなだけで、きっと苦しんでいる坂瀬くんは、潰れてしまう。

ただでさえ今まで辛かったと思うのに、私は坂瀬くんに綺麗なものを押し付けて、坂瀬くんを無理矢理笑顔にさせてきた。


「希望なんて、見せられないんだよ。下手に見せてしまえば、アイツは盲目になるまで色を求めてしまう。...俺も、どうしてやれば良いか分からない。だから、無理矢理止めるしかなかった。それが余計にアイツを傷付けることも分かってた。でも...でもそうでもしなきゃ、アイツは...」


涙が、零れた。

泣いたのなんて、久々だった。
最後に泣いたのはいつだっけ、なんでだったっけ。

きっと、自分勝手な理由だっただろうな。

私は自分勝手だ。

青柳颯太のことも、傷付けた。
坂瀬くんのことも、苦しめた。


「最低だ...私...」


そう言うと、青柳颯太は私の頭に手をぽんと置いた。


「俺は、お前ならアイツを助けられるんじゃないかと思ってる」

「えっ?」

「白河も、そう言ってた」

「翡翠...?」

「おう。白河、昔天馬と会ってるんだよ」
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