世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
『今はまず、止めなければいけない。天馬が残りの金平糖を口にする前に』


青柳颯太と別れたあと、私は家に向かっていた。

青柳颯太と翡翠の優しさに救われて、気持ちは随分と楽になった。
そして、坂瀬くんのことを聞いて、それ以上の苦しみを持って帰った。

色が見えない。
私はそれを知らず坂瀬くんを傷付けてきた。

だから、坂瀬くんを救わなくてはいけない。

でも、どうやって。

その答えは、分かっていた。
坂瀬くんに、色がある世界を忘れさせること。
色が見えるという希望を、捨てさせること。

それはあまりにも残酷だった。

目が見えなくなってしまうことは、避けてあげたい。

今以上に、坂瀬くんは苦しむことになる。

坂瀬くんは言っていた。
もう、約束を守れないかもしれない、と。

それはつまり、残りの金平糖を食べてしまうことを意味していると知った。

青柳颯太が坂瀬くんを怒鳴り付け、暴力を奮ってまで止めたその最悪の未来を、坂瀬くんは辿ろうとしている。

私はそれを、止めなくてはいけない。

ただ、その具体的な方法は、何も思い付いていなかった。

青柳颯太に言われた。
坂瀬くんから離れることはしなくていい、と。
それはお互いを傷つけることになるから、と。

かと言って、一緒にいれば坂瀬くんは同じ景色を見ることを望んでしまう。

あの金平糖は、麻薬だ。
景色を見るという快楽を得て、その後得た快楽以上の代償がある。

抜け出せない。
苦しみから、絶望から。
坂瀬くんにとって、どちらも幸せとは言えない。

答えが、見つからない。
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