世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「あ、おはよ、白河さん」

「おはよう、翡翠」


それからすぐに、翡翠が登校してきた。


「おはよう、坂瀬くん、日和ちゃん」

「あっ、白河さんの鞄にもついてるね」

「うん。二人もつけてくれてるんだ、すごく嬉しい」

「うん、もちろん」

「俺、気に入ったからさ、このうさぎ」


そんな話をしていると、青柳颯太も教室に入ってきた。


「三人とも早いな。はよ」

「おはよ、颯太。あ、颯太もちゃんとつけて来てる」

「そりゃあな」

「みんなつけてくれてるんだ、嬉しい!」


四人で鞄のうさぎを見せ合う。
それぞれの個性が出ていて面白いし、仲良しって感じがして嬉しい。


「なんか仲良しグループって感じだね」

「俺らそうなんじゃねーの?」

「そうだな、ここまで来りゃ」

「うん。仲良いでしょ、他の人達より仲良い自信あるんだけど」


そう言い合って笑い合う。

周りから見れば、何てことない風景だ。

ただ、心のどこかで思ってしまう。

今、この景色も、坂瀬くんには色が見えていない。
うさぎの色も、綺麗な青空も、何もかも。

そして、私達が止めなければ、坂瀬くんは本当に何も見えなくなってしまう。

そんなの、嫌だ。

勝手な私の思いを押しつけることになるだろうけど、それは嫌。
坂瀬くんから、この世界を奪いたくない。
私達が笑っているこの景色も、坂瀬くんに見てて欲しい。
私達が笑っているのは、坂瀬くんのおかげでもあるから。
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